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2010/01/05

ラブ・レター 浅田次郎

正月元旦に、近所のブックオフに行ってしこたま本をゲットしてきました。

一冊105円のものを7冊、1冊300円のものを1冊。計8冊
改めてみると実は短編集が目立ちます。
山本文緒さんの短編集、浅田次郎さんの短編集2冊、角田光代さんの短編集1冊
残りは津本陽さんの小説2巻組、あとは、藤本ひとみさんのとか、養老孟司さんの本。

浅田次郎さんの小説は何度か取り上げた気がするんですが、気のせいかもしれません。
だって、ここのカテゴリーで「書籍」見ても何にも入ってないし(苦笑
北方三国志とか、北方水滸伝とか、以前書いたやつはいったいどこのカテゴリーなんだ?
・・・改めて今年から読んだ本のレビュー入れていきますよ。
興味のある方は書籍カテゴリーで拾ってやってください。
 
 
さて第一冊目は浅田次郎の短編集。表題は「鉄道員(ぽっぽや)」
表題作は高倉健主役で映画化されているし、結構騒がれたのでご存知の方もいるかと思います。

 
自分はこの中で一番心が震えた「ラブ・レター」について書こうとおもいます。

なんでそんなに心が震えたんか。
この作に限らず浅田さんの作品の多くに共通しますが、その主人公への感情移入はいともあっさり簡単に出来てしまいます。
同じような環境に育ってきた人物像であればともかく、まして同じ時代、同じ国の人でなくても。

たまたまですが主人公高野五郎は今の自分とおそらくほぼ同じ年代です。
多分、最初にこの本を読んだときは10年近く前のこと。
もう10年近くたつのか、という思いと10年たっても吾郎さんの哀しみが変わらず伝わってきました。


吾郎は刑事に「お前のかみさんが死んだから、始末つけろ」と言われて何のことかとはじめ気がつかないが、思い当たる節がある。
以前親しくしているヤクザに言われて戸籍を「貸した」ことがあった。見知らぬ中国人女性と戸籍上では結婚していることになっていた。
その中国人女性が死んだという。

話の筋だけ言えば、吾郎は千葉の片田舎で売春婦として働いていた今まで会ったこともない戸籍上の妻の中国人女性の遺体を引き取って、お骨を彼の田舎、北海道の海沿いの寒村にある吾郎の家のお墓に入れることを決心するまでを描いています。

この作で、ラブレター、と思われる中国人女性、高野白蘭から吾郎に宛てた手紙は2通。
そのどちらも、文章としては別に名文でもなんでもありません。
彼女も、ただ中国から出稼ぎに来て、吾郎のことは入管や警察取調べを受けときのために、顔写真や性格や癖を聞いているのみです。
彼女は自分のために紙の上だけでも結婚してくれて日本で働くことができたことに対する、吾郎への感謝の気持ちが手紙にはつづられています。
この日本で頼るべき相手は戸籍上だけでも夫である高野吾郎自身しかいないわけです。だけど、事情が事情だけに合うことは許されない。もともとそんなことを望むべくもない。
彼女が吾郎に宛てた手紙には彼女の素朴な内面が溢れてきます。
いざというときのために渡された吾郎の写真を毎日見るうちに、会った事も無い吾郎の事を大好きになった、ということも書いてあります。
ラブレターといっても十代の頃の青臭い内容じゃなく、二十代の頃の熱情があふれたものとは違う。
ただただ、彼の戸籍だけでも貸してくれて妻にしてくれてありがとうとか、その優しさに非常に感謝していることとか。
心から愛しています、とか。
吾郎の写真だけをたよりにか細く生きていた彼女の想いが、その文章から強く伝わってきます。

吾郎はその手紙を見て、生まれてこのかた誰にも感謝されたことがない自分に飾る言葉などない素朴な言葉で感謝を伝え、あえなく死んでしまった戸籍上だけでも妻だった彼女に憐れみだけではない、ともすれば愛情のような感情を覚え、彼女のあまりにも切ない人生に慟哭してしまう。

読んでる自分も慟哭(w

高野白蘭のかわいそうな半生に同情して流す涙とは違うんです。
多分それも少しはあるんでしょうけど。
手紙の中にあふれ出てくる白蘭のいじらしいほどの想い、そしてそれを思いやって自分や周りの非道さを責める吾郎の純粋な気持ちと優しさ、そういった部分に心打たれたんじゃないかと思いました。

みんな優しい。

言葉で言うと簡単だけど、このことを実行するのは難しいし、たとえ小説であってもこのことをさりげなく表現し描いていくのはことさらに難しい。
自分がここ数年涙腺が緩むのは、ひとつにこの「優しさ」に触れる場面が多いのでね。


さて、この短編集ですが表題の「鉄道員(ぽっぽや)」でも十分泣かされます。
あと「角筈にて」もぐしゅっときましたね。
短編集、といってもそれぞれの作品がすごく際立っていて十把ひとからげに語るのが惜しいほどです。

第117回直木賞受賞作。
読んだことのある方はもう一度本棚からひっぱりだしましょう。
読んだことがない方はぜひ読んで泣いちゃってください。


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コメント

すいません、こちらから失礼いたします。
私音楽座ミュージカルで俳優をやっております渡辺修也と申します。

今度、11/16より新宿文化センターにて浅田次郎先生の『ラブ・レター』をミュージカル化します。私どもは日本で唯一浅田先生の作品をミュージカル化しているカンパニーです。
2000年にも『メトロに乗って』上演し、浅田先生からも「200%満足!」との声をいただきました。

演奏は生フルオーケストラ。しかも今回は新宿区が協力について大々的に講演致します。


こんな急な不躾なご挨拶で本当に申し訳ございません。

下に、記者会見の時の浅田先生の映像もございますので、是非ご覧ください。
http://youtu.be/OfzQh_rEFCg

それでは失礼いたします。


投稿: 渡辺修也 | 2013/10/11 12:47

こんばんは
渡辺さん

『ラブ・レター』のミュージカル、とても気になります。
九州でも見られるといいのですが。

この作品、言葉ではなく心を感じてほしい、とおっしゃる浅田先生の言葉と、これをミュージカルと言う形で表現するとどうなるのかという興味が重なります。

投稿: ポン吉 | 2013/10/11 22:25

読みたいですね

投稿: に | 2017/12/04 01:23

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